昨夜、行ってきた。一人でキャンプ。
先週、意気込んで「蚊は最大の敵、万全の装備で行く」とか、書いた。
書いたのに。
蚊取り線香、忘れた。
家を出る前、あれだけ確認したのに。テント、寝袋、グリル、炭、ビール。全部、車に積んだ。完璧だと思った。
キャンプ場に着いて、荷物を下ろして、いざ蚊対策、と思って、バッグを探ったら。
ない。
「……は?」
玄関の、靴箱の上。今、はっきり思い出した。そこに置いた。「忘れないように、目立つとこ置いとこう」って。目立つとこに置いて、そのまま忘れる。何なんだ、自分。
で、どうしたか
引き返す? 片道1時間半。無理。
コンビニ、あるか? キャンプ場、山の中。近くにない。
詰んだ。
残った装備を確認した。
- 虫除けスプレー、ディート30%:あった
- ハッカ油スプレー:あった
- ムヒ:あった
線香だけ、ない。
「……まあ、なんとかなるだろ」
なった。ならなかった。半々だ。
夕方は、まだよかった
日が高いうちは、蚊もそんなに来ない。
グリルに炭を着火して、鶏肉を焼いた。先週と同じ。塩、胡椒、にんにく。それだけ。
炭火、やっぱりうまい。
ビール、開けた。プシュッ。うまい。
この時間は平和だった。「線香なくても、いけるじゃん」とか、思ってた。
思ってた。
日が落ちてから、地獄
暗くなった。
来た。
蚊。
一匹じゃない。羽音。耳元。ブーン。
「うわ」
スプレー撒いた。腕、足、首。撒きまくった。ハッカ油も撒いた。爽やかな匂い。でも、蚊に爽やかさは関係ない。来る。
線香がないと「面」で守れないんだと痛感した。
スプレーは体に塗る。「点」の防御だ。でも線香は、煙でその場所全体を守る。「面」の防御。テーブルの下に一個置いとくだけで、足元が全然違う。
それが、ない。
足首、やられた。手の甲、やられた。首の後ろ、やられた。
「……くそ」
星は、綺麗だった
蚊と闘いながらも、空を見上げた。
星、綺麗だった。都会じゃ見えないやつ。
でも正直、星をゆっくり見てる余裕はなかった。
見上げた瞬間、首を刺される。下を向いて払う。また見上げる。刺される。
星と蚊の往復。忙しい。
先週は「星を見て、心が整う」とか、書いた。昨夜は「星を見ようとすると、蚊に刺される」だった。
同じキャンプなのに。装備が一個欠けるだけで、こんなに違う。
テント、逃げ込んだ
もう無理。9時過ぎ。テントに逃げ込んだ。
入り口の蚊帳、しっかり閉めた。ここだけは死守。
中に、二匹、入ってた。
「……お前ら」
暗い中、スマホのライトで探して、仕留めた。15分かかった。汗をかいた。何やってんだ、自分。
やっと二匹退治して、寝袋に入った。
寝袋の中で、思ったこと
「蚊取り線香って、すごいな」
普段、当たり前に置いてる。あって当然。だから、ありがたみを忘れてた。
昨夜、なくして、初めて分かった。
あの渦巻き。あの煙。あの匂い。100年以上、日本人を守ってきた理由。
「明治時代の人、天才だわ」
寝袋の中で、一人、感心してた。刺されながら。
朝
6時に起きた。
首、痒い。手、痒い。足首、痒い。
数えた。7箇所。
先週、1箇所で「勝った」とか言ってた。昨夜、7箇所。完敗。
ムヒを塗りまくった。
コーヒーを飲んだ。パンを食った。撤収した。
車に乗る前、もう一回、確認した。「線香、次は絶対忘れない」って。
で、今、家
帰ってきて、玄関に入って、まず見た。靴箱の上。
線香、あった。
昨夜、こいつがここにいたせいで、自分は7箇所刺された。
「……お前のせいだぞ」
線香に話しかけた。線香は返事しない。当たり前だ。
学んだこと
装備は、家を出る前に確認する。当たり前。
でも、それより。
「目立つとこに置いとこう」が、いちばん忘れる。
目立つとこに置くと、「あとでまとめて積もう」ってなって、そのまま忘れる。
だから次から、思い出した瞬間、車に積む。目立つとこ経由は、しない。直接、車。
これが昨夜の、唯一の教訓。7箇所刺されて得た教訓。高い授業料だった。
首、まだ痒い。
以上。
